本の覚書

本と語学のはなし

方舟さくら丸/安部公房

方舟さくら丸 (新潮文庫)

方舟さくら丸 (新潮文庫)

 地下に掘られた採石場跡の洞窟を現代の方舟として整備する主人公。誰が生き残るにふさわしく、誰がふさわしくないのか。重いテーマを扱っているようだけど、安部公房の作品なので、黒いユーモアに包まれてそれほど深刻にはならない。

 『砂の女』は砂の下の世界に取り込まれていく物語であったが、これは〈ぼく〉の地下世界に望んでいるようで望んでいなかったのかもしれない共同生活者たちがふいに闖入し、しかもそこが完全に閉じられることで闖入者たちの世界が完成し、〈ぼく〉がもぐらとしての居心地の悪さを感じてしまうという、『砂の女』を裏返したような作品になっている。


 中学の時に『壁』を読んで無性に惹かれ、いくつか安部公房を読んだ。2年くらい前、また無性に読みたくなった。『方舟さくら丸』はその時に買って、積読になっていたものである。
 今後も時々文庫本を買い足しては読んでいこう。しかし、『方舟さくら丸』を再読するかと言えば、ちょっと微妙。

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