本の覚書

本と語学のはなし

ベンジャミン・バトン/フィッツジェラルド

 先月から「のべらっくす」に参加して短編小説を書いている。しかし、来月も必ず書けるのかといえば、それは分からない。小説は自由でいいのだとは思うが、それにしても最近小説から離れすぎていて、こんな書き方でいいのだろうかとしばしば考え込んでしまう。
 それで、あまり相性が良くない作家で、これまで面白いと思ったことはないのだけど、フィッツジェラルドの短編集を読んでみた。変り種を集めたもの。


 『ベンジャミン・バトン』は映画化もされた作品だが、これが本邦初訳だそうだ。フィッツジェラルドにはまだまだ未訳作品が多いのだ。老人として生まれ、時とともに若返るベンジャミン。私もまた生まれた時には老人であった気がする。
 『レイモンドの謎』は中学生の時に書いたミステリー。幼いといえば幼い。
 『モコモコの朝』はモコモコの犬の一人称小説。そのモコモコ具合はヘミングウェイをモデルにしているとかいないとか。
 『最後の美女』は虚しい感じ。
 『ダンス・パーティの惨劇』はエラリイ・クイーン絶賛のミステリーだと言うが、地の文が女性の語り口調になっていて、その訳し方が気になって集中できなかった。
 『異邦人』はヨーロッパ各地を旅する夫婦が病んでいく様子。フィッツジェラルドゼルダを思わせるらしいが、この夫婦のことはよく知らないので、いずれ調べてみるかもしれない。

 一番好きなのは、最後の『家具工房の外で』。何気ない日常の風景からファンタジーを紡ぎ出して娘に語る父親。しかし娘の空想力は父のそれとはまた違った方向へ発展し、父の造形した人物たちはあっけなく死んでしまう。家具工房から戻った母親はまた彼女で別の物思いにふける。
 この父と娘の会話は形を変えて使えるのではないかな。掌編の中でそれをメインにしたら、完全に盗作になってしまうけど。


 午後から出勤で、それまで少し寝なくてはならないので、急いで感想を書いてみた。