▼びっくりしたのは、古典語では分詞と呼ばれていたものが、現代語では現在形となっていること。そもそも聖書時代のヘブライ語には時制という概念がない。完了形(現代語の過去形)と未完了形(現代語の未来形)というものはあるが(そして、それしかないが)、現代語のように必ずしも過去や未来を表すというわけではなく、問題とされているのは動詞のアスペクトとか様態とかである(たぶん)。
▼聖書を理解する上で、古典ヘブライ語の動詞の性格を把握するのはかなり重要なこととであるのだが、もしかしたら現代のユダヤ人は、言葉の形態はほとんど同じであっても、聖書時代と同じ時間感覚の中に生きているわけではなく、我々と同じく、それを感じ取るには少しく努力が必要なのかもしれない。
▼ていねいないい本だと思うけど、問題点を幾つか。
▼入門書なのに厚すぎる。私は途中で練習問題を解くのをやめ、例文は1つか2つピックアップするにとどめるようになり、最後は日本語の説明のみ超特急で読むようになった。この本を作った人たちは聖書とイスラエルとヘブライ語が大好きで、聖書の言語を疎かに教えるなどということは到底できないのだろうし、疎かに学ぶなどあってはならぬことだと考えてるのだろうけど。
▼巻末に単語集がついていない。新しい単語が出てきたらその都度必ず記憶するものだという立場なのか。日本でヘブライ語を学ぶの人の多くは熱心なキリスト教徒であって、そういう人はこの手の試練が大好きなのか。
▼いや恐らく、同じところから出ている『現代ヘブライ語辞典』をセットで買えということだろう。持っていると便利な辞書であるには違いないが、文法書と辞書を合わせるとゆうに1万円を超える。聖書を読むにはその他にも出費がかさむというのに。
▼千野栄一はたしか語学の教科書は薄いほどよく、その教科書を読むのに必要な語彙はすべて巻末にまとめられてなければいけないというようなことを言っていた。