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ΚΑΤΑ ΜΑΡΚΟΝ 開始

Novum Testamentum Graece: Nestle Aland 28th Revised Ed. of the Greek New Testament, Standard Edition

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新約聖書 訳と註 1 マルコ福音書/マタイ福音書

新約聖書 訳と註 1 マルコ福音書/マタイ福音書

▼マルコ福音書を始める。最初に書かれた福音書。あまりギリシャ語が達者ではない感じが面白いのだが、翻訳ではその辺りだいぶマイルドに修正されている。
▼試みに1章11節から12節の原文と代表的な翻訳の比較をしてみる。

Καὶ εὐθὺς τὸ πνεῦμα αὐτὸν ἐκβάλλει εἰς τὴν ἔρημον. καὶ ἦν ἐν τῇ ἐρήμῳ τεσσεράκοντα ἡμέρας πειραζόμενος ὑπὸ τοῦ σατανᾶ, καὶ ἦν μετὰ τῶν θηρίων, καὶ οἱ ἄγγελοι διήκονουν αὐτῷ.

かくて御靈ただちにイエスを荒野に逐ひやる。荒野にて四十日の間サタンに試みられ、獸とともに居給ふ、御使たち之に事へぬ。(文語訳)

それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。(口語訳)

そしてすぐ、御霊はイエスを荒野に追いやられた。イエスは四十日間荒野にいて、サタンの誘惑を受けられた。野の獣とともにおられたが、御使いたちがイエスに仕えていた。(新改訳)

それから、“霊”はイエスを荒れ野に送り出した。イエスは四十日間そこにとどまり、サタンから誘惑を受けられた。その間、野獣と一緒におられたが、天使たちが仕えていた。(新共同訳)

すると、霊がすぐに彼を荒野に送り出す。そこで彼は、サタンの試みを受けながら、四十日間荒野にいた。しかし、彼は野獣たちと共におり、御使いたちが彼に仕えていた。(岩波訳=佐藤研訳)

▼原文ではやたらにkaiという言葉が使われている。英語のandに相当するが、英語でandが使い放題でないように、ギリシア語でもkaiばかり使うのはぎこちない。ヘブライ語アラム語で多用されるヴァヴの用法を持ち込んでしまったのだろう。そこら辺を邦訳ではきれいに訳し分けたり、無視したりして、なんとか日本語にする努力をしている。
▼ところが、田川建三はこれを「そして」とうるさいくらい一途に訳している。マルコのギリシア語の不自然な感じをなんとか日本語に乗せようとしているのである。

そしてすぐに、霊が彼を荒野にほうり出す。そして四十日の間荒野に居て、サタンによって試みられた。そして野獣とともにいた。そして天使たちが彼に仕えた。(田川建三訳)

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