本の覚書

本と語学のはなし

購入9-1

 タイセンの『ガリラヤ人の影』。チャールズワースの『史的イエス』では、この本は以下のように紹介されている。

Of Theissen’s major contributions one is singulary important : it is now impossible to see the Jesus of history, but we can see him moving within the shadows preserved in the Gospels. (p.11)

 歴史の中で生きたイエスを知ることはできないが、フラウィウス・ヨセフスの文献などを読み込むことで、まだエルサレム神殿の建っていた頃の歴史的、社会的、文化的状況を把握することはできる。福音書の中に保たれたイエスの影は、そこから史的イエスとしてある程度再現可能であるだろう。


 翻訳も出ている。実際に原文を読む時になって、参照用に買うかどうするか考える。
 タイトルは『イエスの影を追って』。ガリラヤ人がイエスに置き換えられている。定冠詞付きのガリラヤ人がイエスのことであるのは当然なのだけど、もちろんタイセンがあえてガリラヤ人としているのには訳がある。しかし、日本ではガリラヤ人では何のことだか全く通じないだろうから、イエスにせざるを得なかったのだろう。
 そんな努力をしても、今では絶版になっている。キリスト教関係には限らないだろうが、良書といえども学術書の商業的寿命は短い(この本は学術書の体裁ではなく、物語風のようだけど)。悩ましい問題だ。

 ブログは簡潔にするつもりが、少し長くなってしまった。