本の覚書

本と語学のはなし

購入7-2

BHSのマフテアハ

BHSのマフテアハ

 小林洋一編訳『BHSのマフテアハ』(ヨルダン社。知らない人にとっては謎の書名だろう。BHSはビブリア・ヘブライカ・シュトゥットガルテンシアの頭文字で、ヘブライ語聖書の最も権威のある校訂テキストのこと。マフテアハはヘブライ語で「鍵」のことだそうだ。
 BHSを読む上で欄外に記された様々な略語などの知識は必須であるが、私のように独学でヘブライ語を学ぶ者はこれがよく分からない。今のところ、私はそれらをなかったことにして、本文のみを読解している。もちろんそれで素人なりに読めることは読めるのだが、せっかくなので何とかBHSを使いこなしたいものだ。

 ネストレの新約聖書にも、日本語で分かりやすくアパラトゥスの使い方を教えてくれる本があると大変ありがたい。

 日本聖書学研究所『死海文書 テキストの翻訳と解説』(山本書店)死海のほとりの洞窟で発見された文書群。ユダヤ教エッセネ派が残したものだと言われている。キリスト教の根底を覆すような発見が隠されていると喧伝する者もあったが、そのようなスキャンダラスなものは含まれていないようだ。

 田川の『書物としての新約聖書』で知ったのだが、この文書群の中に「マルコ福音書」の断片ではないかと言われている(田川はそうと考えるが、反対意見の方が多いようだ)写本が存在する(7Q5)。
 もしマルコだとすれば、新約聖書最古の写本であるどころか、一般的にマルコが書かれたとされている60年代後半という説がかなり早まることにもなる(40年代から50年代)、という。もっとも、あまりに小さな断片なので確定的なことは言えない。別の断片でも発見されない限り、この論争に決着がつくことはないようだ。