本の覚書

本と語学のはなし

Trout Fishing in America/Richard Brautigan

 アメリカの鱒釣りをめぐるショートショートなのだけど、アメリカの鱒釣りについて知識を得るための本ではない。
 たまに擬人化されたアメリカの鱒釣りが出てくる。牧歌的でシュールレアリスティク。それでいて、過ぎ去った時代への愛惜が感じられるような本。悪ふざけが過ぎるようでいて、読み終ってしまえば何だか悲しくなってしまう。

 ところで、ブローティガンはマヨネーズで終わる小説を書きたかったのだそうだ。最後から2番目の「マヨネーズの章への序章」でそう書いている。そして、最後の章は「マヨネーズの章」。これら2つの章には、アメリカの鱒釣りはもはや微塵も姿を現さない。
 「マヨネーズの章」の全文を藤本和子の訳とともに掲載する。

THE MAYONNAISE CHAPTER


             Feb 3-1952
Dearest Florence and Harv.


 I just heard from Edith about
the passing of Mr Good. Our heart
goes out to you in deepest sympathy
Gods will be done. He has lived a
good long life and he has gone to
a better place. You were expecting
it and it was nice you could see
him yesterday even if he did not
know you. You have our prayers
and love and we will see you soon.
 God bless you both.

        Love Mother and Nancy

P.S.
Sorry I forgot to give you the mayonnaise.

  マヨネーズの章



                              一九五二年二月三日

 親愛なるフローレンスとハーヴ。
 グッド氏逝去の報せ、たった今、イーディスから聞きました。心からおくやみを言います。安らかに永眠されますように――。あの方は幸せに長生きし、亡くなられてもっと良いところへ行かれたのです。あなた方としても予期していたことでしょう。かれにはもうわからなかったとしても、昨日、あなたがたが行って会ったのは何よりでしたね。祈りと愛をこめて――。近々、会いましょう。
 あなたたちに神の御加護がありますように。


                              母、ナンシーより


 追伸
 あげるの忘れてしまって、ごめんなさいね、例のマヨネーズ。

 原文はもう少し謎めいているようだ。確かなことは、Goodなる人物は過ぎ去り、それとともにマヨネーズが思い出されたということである。

Trout Fishing in America

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アメリカの鱒釣り (新潮文庫)

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