本の覚書

本と語学のはなし

キリスト教の2000年/ミシェル・クリスチャン

 初代教会から第二バチカン公会議までの2000年を概観するカトリック教会史。コンパクトすぎてちょっと物足りない。ボーケンコッターの『新世界カトリック教会史』(エンデルレ書店)を参考にして書いたというから、いずれこちらを読んでみることにしよう。

 記述は完全に第二バチカン公会議の精神に基づいている。保守的、権威主義的な教皇に対しては批判も辞さない。教皇の不可謬権を決めるために第一バチカン公会議を開いたピオ(ピウス)9世(在位1846-78)などに対してもあからさまに不快感を示しており、カトリックでもこういう言論が可能なのだと、新鮮な驚きを感じた。

 アウグスティヌスカトリック神学の根幹を作った教父ではあるが、その思想には逸脱も見られる。
 一つには、神の側からの恩寵を強調するあまり、人間の自由意思を否定し、予定説を取るに至ったこと。後にルターはアウグスチノ会に学んでいるし、カルヴァンは原罪による人間の完全な堕落と神の予定説を教義として採用している。パスカルに影響を与えたヤンセニズムの異端も、アウグスティヌスの予定説に立っている。
 これはしかし、あくまでカトリックからの逸脱でしかない。もう一つの方は深刻だ。正当防衛のための正戦だけでなく、「キリスト教のためなら、いつでも戦争ができる」として聖戦の理論をも展開したというのだ。十字軍において、また後の植民地獲得の口実として、聖戦の概念は利用されていく。

 どのみち教会には通わないだろうから、キリスト教には自由にアプローチすればよいのだが、大概自分はカトリック派かプロテスタント派かと考えてしまう。今はややプロテスタント側に振れているところだ。