本の覚書

本と語学のはなし

購入その六

 来月半ばまで購入を凍結したつもりだったのに、再開を一月前倒しにしてしまった。


ランボー詩集 (新潮文庫)

ランボー詩集 (新潮文庫)

  • 作者:ランボー
  • 発売日: 1951/10/23
  • メディア: 文庫
 堀口大學訳『ランボー詩集』。先日Sensationを読み、懐かしく堀口大學訳の「感触」を思い出した。全詩集も出ているし、小林秀雄訳も捨ててはならないが、私にとっては先ずこの訳である。


CD付 精選 中国語重要文例集 第2版

CD付 精選 中国語重要文例集 第2版

  • 発売日: 2012/02/01
  • メディア: 単行本
 上野恵司編『精選 中国語重要文例集』。今は姉妹編の『精選 中国語基本文例集』を勉強しているところ。中国語はこの二冊をしっかり覚えるだけでいいのではないか。二三冊短篇小説を読んだら、古典に戻ってよい。


はじめての漢詩創作

はじめての漢詩創作

 鷲野正明『はじめての漢詩創作』。作詩は石川忠久に師事したという。漢詩の特殊な文法(倒置や省略)について触れてくれているのは嬉しい。ただし、初心者は七言絶句から入るべしということで、平仄の表も五言や律詩の場合は載っていない(仄韻はもちろん)。


漢詩の事典

漢詩の事典

 松浦友久編『漢詩の事典』。人物、詩跡、用語の事典。漢詩にけっこう散財してしまった。そんなつもりではなかったのだけど。


How to Read Chinese Poetry (How to Read Chinese Literature)

How to Read Chinese Poetry (How to Read Chinese Literature)

 Jie Cui & Zong-qi Cai『How to read Chinese Poetry Workbook』。先日購入した『How to read Chinese Poetry』のワークブック。漢詩でよく扱われる二十のテーマに、それぞれ五つの詩を配している。簡体字の原文、ピンイン、英訳、語釈、現代中国語訳、英語によるコメント。更には、各単元の終わりに練習問題まで付いている。
 例えば「思乡」という単元では、李白の「静夜思」が紹介される。

 床前明△ chuáng qián míng yuè guāng
 疑是地上霜△ yí shì dì shàng shuāng
 举头望明  jǔ tóu wàng míng yuè
 低头思故乡△ dī tóu sī gù xiāng


 Before my bed, the bright moonlight
 I mistake it for frost on the ground
 Raising my head, I stare at the bright moon,
 Lowering my head, I think of home

 原文、ピンイン、英訳の配置は便宜上変えてある。イタリックにした「月」は入声、現代音では失われた声調である。巻末の付録によれば、実際にはngjwotと表記されるべき音だったらしいが、私にはこれをどう発音したらいいのか分からない。
 中国では一般に『唐詩三百首』を用いる。しかし、『唐詩選』に親しんでいる日本では、起句の「明月」は「看月」、転句の「明月」は「山月」とする。訓読は、「牀前月光を看る/疑うらくは是れ地上の霜かと/頭を挙げて山月を望み/頭を低(た)れて故郷を思う」となる。
 なお、普通これは五言絶句と習うのだけど、平仄は規則通りでない。そのためこの本では、古体詩に属する古絶として分類している。

 語釈と現代中国語訳を省略し、英語のコメントを書き抜いておく。

This poem by Li Bai is argubably the most frequently recited of all Chinese poems. If a child living in or outside China is taught by his or her parents to recite Chinese poems, this poem is most likely the one to begin with. It has delighted all generations of Chinese readers, old and young, with its simple language, its musicality (thanks to the sonorous, “ang”-ending rhyme), and its poetic exaggeration. In real life, few of us could believe that one can mistake the moonlight for frost on the ground. But with a “willing suspension of disbelief” (John Keats’ word), we can appreciate this exaggeration as expressive of the poet’s severe homesickness. Can you think of any other reasons for the unrivaled popularity of this poem?

 人口に膾炙した詩句は網掛けになっているのだけど、この詩は全部が網掛けである。それもそのはずで、この詩は中国で最も親しまれ口ずさまれているというのだ。おそらく著者たちも(全員が中国系ではないようだが)、幼い頃に先ずこの詩を習い、その平易さ、音楽性、そして詩的誇張を愛してきたのだろう。