本の覚書

本と語学のはなし

完全マスター 中国語の文法/瀬戸口律子


 日本の高校を卒業していれば、中国語の初級文法は、習わなくても既に半分くらい理解しているようなものだ。会話練習をしながらちまちま文法を拾うよりも、一気に文法を終えてしまってから、それぞれの目的に沿って学習する方が効果的ではないかという気がする。
 それでは私の目的とは何だろう。困ったことに、特に何もないのだ。漢詩を現代音で朗読してみたいとは思うが、それなら文法を学ぶ必要など全くなかった。発音だけでいいのである。だが、漢詩(読み下し)を職場の読書に取っておくことにしたのだから、せっかく空いたポストをしばらく中国語に与えてみようと思う。
 三つの道が考えられる。会話の訓練をすること。しかし、これに専念しようとして続いたためしはない。CDを聞き流すだけでよい。基本例文を暗記して、文法と単語の基礎を身につけること。英語では構文集や例文の充実した単語集で成功したことがある。やってみる価値はあるだろう。小説を読むこと。英語以外の言語は、文法終了後、ほとんどこれしかやって来なかった。しかし、中国語はピンインが分からないと辞書が引きにくい。丁寧な読本テキストから入る必要があるだろう。
 どこまで続くだろう。


 この文法書がいいのか悪いのかは、よく分からない。「完全マスター」は言いすぎだし、レファレンスとして使うにはかなり見にくい。
 中国語の文法用語の概念は、西洋のそれに親しんできた私にとっては分かりにくい。例えば品詞は普通その働きによって分類する。形容詞は動詞の目的語にはならないから、目的語となっていれば、それは名詞として使われていると考える。ところが、中国語では「我不怕热」(私は暑いのは平気です)とあっても、「热(熱)」はあくまで形容詞であって、形容詞のまま目的語になると考えるのである。
 主語と目的語の定義も妙に落ち着かない。「今天走了三个人」(今日三人去りました)の主語は動詞の動作の主体である「人」だと考えたくなるが、中国語文法の世界ではこれを目的語というのである。
 例文は全て読んだが、練習問題には一切手をつけなかった。これまで文法書の練習なんてやったためしがない。だから語学が上達しないのだろう。

完全マスター中国語の文法

完全マスター中国語の文法

  • 作者:瀬戸口 律子
  • 発売日: 2003/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)