本の覚書

本と語学のはなし

コロボックル物語1 だれも知らない小さな国/佐藤さとる


 昔読んだ佐藤さとるの作品が何であったか思い出せない。ただ彼の名前にはいつも郷愁を感じていた。
 今読んでみると、意外に大人な文章だった。主人公の語りは過去の回想であるし、コロボックル(小人)を最初に目撃したのは小学生の頃だが、本格的な交渉を持つのは戦後、専門学校に進んでからのことだし、コロボックルの一人称は「ワシ(ラ)」であるし、コロボックルの土地を高速道路の用地買収から守るなどという社会派な筋であるし、やがてはその土地を主人公自らがお金で買い取るのである。私が読んだ佐藤さとるは、これではなかったと思う。
 シリーズはまだ続く。他の作品もある。だが、読むべきかどうか迷っている。少し休んで、またたまらなく渇きを覚えてからでもいいかな。きっとそんな時が来ると思うのだ。