本の覚書

本と語学のはなし

小説を書きたい人の本/清原康正


 カルチャーセンターで小説教室を担当する人が監修した本。平易な基本が綴られているだけで、とりわけワクワクするような内容ではない。冒頭の三人の作家(市川拓司、島本理生保坂和志)へのインタビューがほとんどクライマックスといった感じだ。
 しかし、小説を書き始めるにはこの程度の基本だけで十分である。それすら必ずしもすべてを遵守すべきというわけではなく、意識的であるならば時に逸脱してもよいだろうというようなものだ。自分のルールやスタイルは、書きながら編み出し、身につけなくてはならない。真に頼るべき小説作法はそれしかないし、あるいは真に踏み越えてゆくべきもそれだけかもしれない。
 アイディアを喚起するのも、情報を集積するアンテナを鋭敏にするのも、それらの間に隠された連絡を見出し繋げるのも、もっぱら書く行為のよくするところだろう。
 先ずは書くことだ。