本の覚書

本と語学のはなし

クリスマス・キャロル (1970)


 ミュージカルとしての大団円的演出のために、後半に行くに従ってどんどん原作とは離れていく。もともと複雑な話ではないけど、さらに枝葉が切り落とされるし、スクルージは分かりやすい守銭奴にするため、たんなる高利貸のように描かれている。
 それが奏功しているというべきかとなれば、私の判断としては、改心といったところで守銭奴を裏返しにした金銭的気前のよさばかりが目立ってしまうではないかと言いたくなる。この物語においてティム坊やは貧しく弱い神の象徴であると思うけど、彼にまつわる非常に重要なセリフは省かれ、彼の神性はただお金によってのみ贖われ、スクルージラクダに乗って針の穴を通り抜けるチャンスもここでは永久に失われているかのようである。
 一般には評価の高い作品だが、私の定番にはなりそうにない。1951年版がいいのだろうか。いや、やはり原作を読むのが一番なのだろう。

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  • 発売日: 2007/10/26
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★『クリスマス・キャロル』主要映画:http://d.hatena.ne.jp/k_sampo/20121223/p2
 何度も映画化されているので、ディズニーにニームにしろ、先行作品の映像に大きく影響を受けているようだ。