本の覚書

本と語学のはなし

新編忠臣蔵(一)/吉川英治


 映画でもドラマでもきちんと『忠臣蔵』を見たことはないが、昔は年末になれば毎年必ずテレビで放映されていたから、それぞれ部分的しか目にしなかったにしろ、大方の筋は分かる。
 吉川英治の『新編忠臣蔵』は全二冊。前半は浅野内匠頭の刃傷から赤穂城の明け渡し、山科に移った大石内蔵助の遊蕩三昧とお陸の離縁。赤穂の浪人たちも内蔵助の腹の内は読みかね、憤慨する。読みながら内蔵助の姿はどうしても北大路欣也に擬することしかできない。してみると、九十六年のドラマは案外よく見ていたのかもしれないし、そこで初めて『忠臣蔵』の面白さに出会ったのだったのかもしれない。


 吉川を読むのは初めて。司馬はジャーナリスト的で、作品全体の完成度にはこだわっていないような気がするが、吉川はさすがに作家の名人芸という感じ。吉良と浅野の間のバランスも心地よい。
 困るのは折々知らない言葉が出てくること。職場には辞書を持って行かないから、紙にメモして家に帰ってから調べたりする。電子書籍リーダーを買うべきかとも思うが、現状では安い洋書を入手したり吉川を読むのに使うだけだろうから、直ちに購入へは踏み切れない。

新編忠臣蔵(一) (吉川英治歴史時代文庫)

新編忠臣蔵(一) (吉川英治歴史時代文庫)