本の覚書

本と語学のはなし

生活適用学習聖書(欽定訳)届く


 文語訳聖書のよく分からないところを欽定訳聖書で見てみる。しかし、文語訳は欽定訳からの重訳の趣もあって、全く同じようなふうに分からないことがある。ちょっと長いが、創世記第六章の第一節から第四節まで。

 1 人地のおもて敷衍ふえはじまりて女子をんなのこ之に生まるゝに及べる時 2 神の子等人の女子むすめの美しきを見てその好むところの者を取りて妻となせり 3 ヱホバいひ給ひけるはわがみたま永く人と争はじは彼も肉なればなりされど彼の日は百二十年なるべし 4 当時このころ地にネピリムありき亦其後そののち神の子たち人のむすめの所に入りて子女こどもを生ましめたりしが其等それらも勇士にして古昔いにしへ名誉ある人なりき


 神の子らにはいろいろ解釈があるのでここでは問わない。が、ネピリムとは何か。神の子らとどんな関係にあるのか。余談だが、句読点を付けるくらいの改訂はしてもいいと思う。文語訳の読者を積極的には増やしたくないのだろうか。
 同じ個所の欽定訳。

 1 And it came to pass, when men began to multiply on the face of the earth, and daughters were born unto them, 2 that the sons of God saw the daughters of them that they were fair; and they took them wives of all which they chose.
 3 And the LORD said, My spirit shall not always strive with them, for that he also is flesh: yet his days shall be an hundred and twenty years. 4 There were giants in the earth in those days; and also after that, when the sons of God came in unto the daughters of men, and they bare children to them, the same became mighty men which were of old, men of renown.


 分かったのはネピリムが巨人であるということくらいだ。なお、イタリック体になっている部分は、原文にはない語を補ったものらしい。
 同じ個所の新共同訳。

 1 さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。 2 神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。 3 主は言われた。「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして人の一生は百二十年となった。
 4 当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、神の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。


 恐らく解釈には問題があるだろう。百二十年というのも、人の一生のことではなく、ノアの洪水までに与えられた回心のための猶予期間かもしれない。しかし、他の解釈への道を排除したおかげで、読んで得心の行くようには訳してある。新共同訳によれば、ネピリムも神の子らと人の娘たちとの間に生まれた昔の英雄だということになる。