本の覚書

本と語学のはなし

『青春は美わし』


●ヘッセ『青春は美わし』(高橋健二訳、新潮文庫
 『青春は美わし』と『ラテン語学校生』の二つの小品を収める。いずれも短すぎて少々物足りない感じ。前者はもともと原文を読む際の参照翻訳として読んでいたものだけど、こういう作品はそういうスピードで味読するのが本来の接し方かもしれない。
 ヘッセは感受性が最も豊かだったころの記憶と結びついているために、それほどたくさん読んではいないのに、一番親しい作家のような気がしている(ページ数から言えば一番読んだのはドストエフスキー、冊数で言えばシェークスピアが一番だろう)。かつて夢中になった『車輪の下』『デミアン』『郷愁』『春の嵐』『シッダールタ』『クヌルプ』などは、ずっと再読を恐れて避けてきたのだけど、失望するにせよ胸の疼きを覚えるにせよ、そろそろそれを受け止めることのできる時期が来たようだ。少しずつ読み返していきたい。

青春は美わし (新潮文庫)

青春は美わし (新潮文庫)