本の覚書

本と語学のはなし

「ボヴァリー夫人」うまい


 まだ読み始めたばかりだけど、フローベールは理想的なフランス語の書き手ではないかという気がする。例を挙げると長くなる。何の説得力もないかもしれないが、決して特徴的とは言えないかもしれない一文のみを書き抜いておく。

Elle avait tant souffert, sans se plaindre, d’abord, quand elle le voyait courir après toutes les gotons de village et que vingt mauvais lieux le lui renvoyaient le soir, blasé et puant l’ivresse ! (p.51)

自分の夫が村の娘たちとさえいえばその尻を追いかけるのを見た時や、晩になって、夫があちこちの悪所から堪能した熟柿臭い息をはきながら*1帰ってきた時、彼女はずいぶん苦しんだ。(上p.11)


 やや古臭い名調子という感じはするが、実際古いのだからそれは仕方ない。

*1:「熟柿(じゅくし)臭い息」とは酒に酔った人の臭い息のこと。原文を普通に訳せば「酔いどれの匂いを放ちながら」というくらいの表現。