本の覚書

本と語学のはなし

『野性の呼び声』


●ロンドン『野性の呼び声』(深町眞理子訳、光文社古典新訳文庫
 動物ものとだけ知っていたので、感傷的な文章を想像していた。全然そんなことはなかった。どうリライトしたら子供向けに仕上げることができるのだろうかと不思議になるくらいだ。
 バックという名の犬の内面が、過度に人間的な解釈を施されて描かれることはない。内なる野生は我々の遠い記憶に訴えつつ、我々の内にもいつの間にか呼び戻され形成されるようにして描かれる。その辺りの筆はなかなか見事だ。
 バックをめぐる人間たちの物語も辛辣で面白い。だがそれも、半ば犬の視点で描かれており、通り過ぎてしまえばどんな絆ももう過去のものである。



 和書と洋書の両立は難しい。普段は英語の本とフランス語の本を読み、日本語に飢えた時だけ洋書を休み和書を手に取ることにする。


 塾で高校生に教えるのは夏が最後なので、授業の最初の10分くらいは自由に使わせてもらっている。英語をどう勉強するべきか話したり、長文読解の具体的手順を示したり。担当者の許可を取っているわけではないけど。