本の覚書

本と語学のはなし

『ジェルミナール』


エミール・ゾラ『ジェルミナール』上中下巻(安土正夫訳、岩波文庫
 5月の連休に読み始めて*1すぐに中巻に入ったものの、その後は塾の授業や準備に追われてずっと放置していた。再び読み始めたのは最近のことで、いったん途切れた流れを取り戻すのに苦労した。


 主人公のエティエンヌは『居酒屋』のジェルヴェーズの息子である。そのことは読み始めた翌日の日記にも書いてある。*2
 こうも書いた。「『居酒屋』は中学の時にも翻訳で読んだが、さっぱり内容を覚えていない。エティエンヌの仕送りの話が出てくるかどうか知らないけど、『ジェルミナール』を思い浮かべながら読むのは楽しいにちがいない」。
 仕送りの話は実は『居酒屋』の最終章に出てくる。新潮文庫から引用しておく。

 その夜、クーポーは夜っぴて飲み歩いたらしく帰らなかった。翌日、ジェルヴェーズは鉄道の技手になっている息子のエティエンヌから十フランを受け取った。息子は暮らしむきがよくないのを知っているので、ときおり百スー銀貨を何枚か送ってよこすのだった。(p.579)


 私が自分で発見したのではない。論創社の「ルーゴン・マッカール叢書」の新訳の中身(の一部)をアマゾンで見ていたら、あとがきの中に書いてあったのだ。*3


 ところで、同じあとがきの中にこんなことも書いてある。「第9巻『ナナ』とナナの存在が第二帝政の腐敗を露出させ、1870年の普仏戦争へとなだれこむラインを示しているとすれば、おそらく『ジェルミナール』とエチエンヌ、炭鉱ストライキの流れは71年のパリ・コミューンへと向かっているように思われます」(p.692)。
 そう、『ジェルミナール』においてエティエンヌはもう鉄道技師ではない。炭鉱に仕事を求め、社会主義に目覚め、ストライキを主導し、挫折し、しかしほのかな希望を胸に抱く青年である。
 岩波文庫版の訳者、安土は「自然主義的というより社会主義的」と形容する。環境の決定論よりも人間の意志の方が歴然としているというのだ。そして、ゾラの理想とするところは第三共和制の理想とするものだともいう。


 岩波文庫の『ジェルミナール』は旧字体だし訳語も古めかしくて読みにくかった。その上、炭鉱の情景を想像することが難しい。論創社のは挿絵入りで分かりやすそう。
 ゾラはもっと読みたいし、論創社の訳が文庫化されることはないのだろうか。


 久しぶりに本の感想を書くので、とりとめのない話になった。


ジェルミナール 上 (岩波文庫 赤 544-7)

ジェルミナール 上 (岩波文庫 赤 544-7)

ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

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