本の覚書

本と語学のはなし

『モーム短篇選(上)』


●『モーム短篇選(上)』(行方昭夫編訳、岩波文庫
 モームの短篇はモーパッサンの系譜に属する緊密な物語で構成されており、読み始めればあっという間に最後までたどり着く。しかし、1週間もすればきれいに全部忘れてしまいそうな気もする。
 タヒチを舞台とする「エドワード・バーナードの転落」は「月と六ペンス」の変奏曲の一つだろうけど、いわゆる「転落」の対立項として持ち出されているのがアメリカのビジネス界であるというところ、やや深みにかけるきらいはある。
 一番興味深かったのは「十二人目の妻」。結婚詐欺師の話であるけど、イギリスの旧時代の道徳観がよく分かる。
 植民地での暮らしに多く触れられているのも見逃せない。


 この本は行方昭夫訳というので出版された当初(2年前)に買ったのだった。*1行方訳は原文と照らし合わせてみることでその凄さが分かるタイプの訳文だと思う。


モーム短篇選〈上〉 (岩波文庫)

モーム短篇選〈上〉 (岩波文庫)

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