本の覚書

本と語学のはなし

居酒屋


 何度も同じことを書いているが、ついつい忘れてしまうのでもう一度書いておく。今後の読書の中心は原典講読である。目標は英語を自由に読み、フランス語を着実に読み、ドイツ語とギリシア語とラテン語を忘れないこと。


 ゾラの『居酒屋』から。

Puis, comme la noce, arrivée sur la place Vendôme, regardait la colonne, M. Madinier songea à faire une galanterie aux dammes ; il leur offrit de monter dans la colonne pour voir Paris. (p.129)

一行がヴァンドーム広場へ着いて記念塔をながめているとき、マディニエ氏はご婦人連にいんぎんなところを見せてやろうという気をおこした。塔にのぼってパリ見物としゃれようと言いだしたのである。(p.116)


 ジェルヴェーズとクーポーが結婚式を挙げた後、出席者一同は、驟雨のために予定していた遠出を行わず、代わりにルーブル美術館を巡り、ロワイヤル橋の下で休憩する。引用した場面は、夕食のために戻ろうとするところ。
 ヴァンドーム広場の記念柱は1810年、オーステルリッツの勝利を記念し、プロシア軍から奪った大砲をつぶして、ナポレオンが作らせたもの。ガイドブックを見ればそういう歴史を知ることはできる(今は手に入らないけど、JTBの『街物語 パリ』*1がとても詳しい)。しかし、中に階段があって昇ることができ、しかもかつては一般に開放されていたというのは、この記述で初めて知った。
 『猫が行方不明』*2バスティーユ広場の革命記念柱を昇るシーンが出てくる(一般には解放されていない)。そこから類推すれば、ヴァンドーム広場の記念柱が昇れるのも当たり前のことなのだろうけど、なぜか今までぼてっとした金属の塊としか思っていなかったのだ。