本の覚書

本と語学のはなし

『20世紀イギリス短篇選(下)』


●『20世紀イギリス短篇選(下)』(小野寺健編訳、岩波文庫
 下巻*1は1950年代から70年代にかけて発表された作品から集められている。同時代の文学をほとんど読まない私には、本当にありがたい企画だ。
 しかし、アンソロジーの編集時期が80年代であるため、それ以降の作品に触れることはできない。不足分は自分でアンテナを張り巡らし、補っていく必要がある。翻訳される作品はわずかだろうし、文庫になるのはさらにごく一部であることを考えると、独力で原典講読する力を強化していかなくてはならない(古典を名訳と対照させながら読む楽しみも取っておきたいが)。とにもかくにも、英語を読むスピードを倍くらいにしなくては話にならない。そんなことを考えさせられた。


 作品はどれも面白いが、私が一番好きなのはジーン・リースの「あいつらのジャズ」。移民女性の怒りが、拙い文体で歌われている。著者はアイルランド出身の医師と英領ドミニカ島ドミニカ共和国ではない)のクレオールの間に生まれ、イギリスやヨーロッパを転々と放浪したという興味深い女性だ。*2彼女の作品の内、現在ほかに日本語で読めるのは、池澤夏樹の世界文学全集に収められた「サルガッソーの広い海」(ヴァージニア・ウルフの「灯台へ」とセットになっている)だけらしい。


20世紀イギリス短篇選 (下) (岩波文庫)

20世紀イギリス短篇選 (下) (岩波文庫)

*1:上巻:http://d.hatena.ne.jp/k_sampo/20100703/p1

*2:ちなみに、下巻の11人の作家の内、8人が女性である。

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