本の覚書

本と語学のはなし

アエネーイス 第4巻

diffugient comites et nocte tegentur opaca ;
speluncam Dido dux et Troianus eandem
devenient. adero et, tua si mihi certa voluntas,
conubio iungam stabili propriamque dicabo;
hic hymenaeus erit. (4.123-127)

...そうすれば、供のものたち逃げて散り、
あやめもわからぬ夜のような、暗に包まれおわるとき、
両人おなじ洞窟に、偶然至るとなるでしょう。
わたしはその時そばにいて、もしもあなたのご好意が、
得られるならば両人を、固い契りで結ばせて、
彼女を彼の妻にして、これで二人の結婚の、
式はできたといたしましょう。(上p.216)


 ユーノー(ゼウスの妻)がウェヌス(アエネーアースの母神)に語りかける場面。アエネーアースとディードー(カルタゴの女王)を狩りに連れ出し、そこで雷を起こして供のものを離散させ、二人を洞窟へ導き、結婚させようと図っている。個人の自由意志などというものはあまり信じられてはいなかったのだ。
 ユーノーはその結婚に立ち会おう(adero)と言う。岩波文庫の注釈には「ユーノーはかかるとき、花嫁の世話をする女神とされる」とある。もちろん6月を表す英語の June は彼女の名(Juno)に由来している。