本の覚書

本と語学のはなし

『Breakfast at Tiffany’s』


●Truman Capote『Breakfast at Tiffany’s』(Penguin Books)
 残念ながら村上春樹が好きな作家や作品は私の趣味には合わないようだ。これまで村上訳で読んだ中で面白かったのは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』くらいだけど(妹が出てくる後半は苦手)、サリンジャーは彼の偏愛する作家ではないらしい。
 『ティファニーで朝食を』も壁に投げつけたい衝動を幾度か感じながら読む。私の英語力不足も大いに非難されるべきだろう。称賛される文体らしいが、私にはさっぱりよさが分からないのだ。でも、英語の達人になったとしても、私の愛読書になるだろうと想像することはできない。
 表題作以外の3つの短篇は素晴らしくよかった。やさしい英語を優れた文章と評したくなるだけかもしれないけど、私には『ティファニー』よりずっといい文体に見える。


 村上訳について言えば、許容範囲内だとは思うし、おそらく新訳とはそうしたものだと思うけど、じゃっかん創作が入っている。そうでなくても、かなり自由を満喫していることがある。ごくたまに首をかしげることもある。引用したのは自由の例である。

 Three hours later we are back in the kitchen hulling a heaping buggyload of windfall pecans. Our backs hurt from gathering them: how hard they were to find (the main crop having been shaken off the trees and sold by the orchard’s owners, who are not us) among the concealing leaves, the frosted, deceiving grass. (p.142-3)

 三時間後に僕らは台所に戻って、荷車いっぱい集めたピーカンを剝いている。自然に風で落とされたものに限られているから、それだけの数を集めるのはかなり骨だ。背中がずきずき痛む。葉っぱの下に隠されたり、霜の降りた草の陰に埋もれたりしているピーカンの実を捜すのはひと苦労だ。おおかたの実は既に枝から振るい落とされて、果樹園の持ち主の手で売り払われていた(つまり僕らはそこの持ち主ではないのだ)。(「クリスマスの思い出」p.190)


Breakfast at Tiffany's (Essential Penguin)

Breakfast at Tiffany's (Essential Penguin)

【参照した翻訳】
ティファニーで朝食を

ティファニーで朝食を

【文庫にもなっている】
ティファニーで朝食を (新潮文庫)

ティファニーで朝食を (新潮文庫)

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