本の覚書

本と語学のはなし

命日


 次はトーマス・マンの『魔の山』(新潮文庫)。買って来たものは直ぐに読むという原則に従えば小島信夫の『残光』(新潮文庫)を選ばなくてはいけないはずだが、時間のある今の内に出来る限り長編を読んでおきたい(本当はもっと真剣に諸々考え、行動すべきなのだろうけど)。あるいは、大学でドイツ文学を学んだ記念のために。今日は当時の仲間であり、5年前に癌で亡くなったTさんの命日である。
 絶版の心配でもない限り、後回しにしていいものを買うべきではない。ある分野に興味を持ったら関連する本を手当たり次第買って乱読するということも読書の一段階として通過すべきではあるし、職業的に必要なら例えば10年後を見据えて積ん読をしておくケースだってあるだろうが、予算も保管場所も制約がある中での趣味の読書であるのだから、読みたい時に読みたい分だけ買ったり借りたりするのがちょうどいいし、自由でもある。後で『残光』を読まなきゃというのは、やがて足枷のように感じられるかもしれないのだから。