本の覚書

本と語学のはなし

トライアル提出


 T社のトライアルを締切日の夜になってようやく提出する。
 時間は十分あったはずなのに、間に合わなくなりそうになってからバタバタと取り掛り、もうちょっと時間をかけるべきだったと後悔しながらの提出である。訳の出来は現在の実力相応といったところだが、あまり自信はない。時間管理が下手でビジネスに疎いのだから、この仕事には向かないのではないかと凹む。明日からゆっくり考えよう。


 『アエネーイス』からの引用。

... Illum absens absentem auditque videtque,
aut gremio Ascanium, genitoris imagine capta,
detinet, infandum si fallere possit amorem. (4.83-85)

はなれて彼女は離れいる、アエネーアースの声をきき、
姿を夢見つその膝に、アスカーニウスをかき抱く。
この子の父のおもかげを、偲び恋いつつみずからの、
ことばに尽せぬ恋情を、賺し得んかと願いつつ。 (上p.212)


 主格の absens は主語のディードーを形容し、対格の absentem は目的語のアエネーアースを形容し、同じ形容詞を繰り返しながら、互いが互いにとって absent であることを強調する(英訳では absent, each from each となっている)。その直後に auditque videtque と動詞二つを畳みかけるリズム。これこそウェルギリウスらしい文体のような気がする。


 今日は疲れたので、あとはカポーティを読めるところまで読んで、限界が来たら寝床に入る。