本の覚書

本と語学のはなし

L’Assommoir


 エミール・ゾラの『居酒屋』を始めた。ル・モンド・ディプロマティクの代わりに、毎日フランス文学を読みたくなってきたのである。時事なら日経とタイムで十分だ。経済フランス語の翻訳をすることもないだろう。まだ最終的な決定ではないが、しばらく試してみる。
 原文は Le Livre de Poche で読み、新潮文庫の古賀照一訳を参照する。

 Gervaise avait attendu Lantier jusqu’à deux heures du matin. Puis, toute frissonnante d’être restée en camisole à l’air vif de la fenêtre, elle s’était assoupie, jetée en travers du lit, férveuse, les joues trempées de larmes. (p.49)

 ジェルヴェーズは夜中の二時までランチエを待った。それから、窓より吹き込む冷たい風にブラウスをまとっただけの肌をさらしていたためにぞくぞくしてきた熱っぽい体をベッドに横ざまに投げかけて、頬を涙でぬらしたまま、うとうとした。(7頁)


 物語の冒頭。修飾句を重ねて長い文章を作るのは欧文の得意とするところであるが、そのまま日本語に変換するとどうしても頭でっかちになってしまう。句を文に直して、二つか三つに分割した方が、現代の読者好みの訳に仕上がるはずだ。それから、ブラウスと訳されている言葉は、原文ではキャミソールである。私は服飾とその歴史に疎いので確信は持てないのだが、古賀の言うブラウスとゾラの言うキャミソールはやはり別物ではないかと思う。
 もしこのまま継続するならば、夏の終わりには読み終える。ゾラの文章とは相性がよさそうなので、もう少しスピードアップすることも可能だろう。

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