本の覚書

本と語学のはなし

『ポストコロニアリズム』


●ロバート・J・C・ヤング『1冊でわかる ポストコロニアリズム』(本橋哲也訳,岩波書店
 理論の概説書ではない。「次々と異なる視点や時間を並列して積み重ねてゆき、そのあいだで互いが互いを刺激するような生産関係が生まれるようにする」(10頁)という、モンタージュの手法によって構成された、実践的な本である。
 文学を読む際に私が一番持ちたいと思っている視点は、ポストコロニアリズムのそれである。テキストはもちろん文学の中だけに限られない。ニューズウィークル・モンド・ディプロマティクを読むこともいい訓練になる。経済もまたそのようなまなざしで見つめるべきだろう。そして「他者」について考え抜くこと、何らかの形で実践をしていくこと(おそらく私にとってもモンタージュは戦略的テクニックとして使えるだろう)。


 ところで、本橋哲也と成田龍一による解説では、適切にも日本人にとって植民地とは何であるかと問いを発している。

「他者」への想像力の欠如と、歴史的な想像力の貧困。大日本帝国の遺産相続人としての「日本人」には、これまで非対称の存在としての「他者」への無理解、すなわち植民地へのそもそもの関心の薄さが存在していた。そのことを認識し、その原因を追及すること。「日本」においてポストコロニアリズムを考えようというとき、こうした営みを避けて通ることはできない。(「ポストコロニアル」222,3頁)


 私の両親は人種差別主義者のショーヴィニストの豚である。つまりどこにでもいるありふれた日本人である。ポストコロニアリズムが挑戦であるというとき、抑圧された人々による挑戦であるだけでなく、同時に我々が主体となる挑戦でもなくてはいけない。