本の覚書

本と語学のはなし

『はじめての金融工学』


●真壁昭夫『はじめての金融工学』(講談社現代新書
 ブラック=ショールズの公式も載っているが、この本でそれを数学的に理解しようというのは無理な話だ。あくまでイメージをつかむための本である。
 面白いのは、金融工学の限界と題して、行動経済学経済物理学の説明にも1章を費やしていること。

 繰り返しになりますが、金融工学ではまず正規分布を仮定し、論理を構築していきます。一方、経済物理学では、実データを虚心坦懐に眺めることによって、べき分布を導入し、モデルを作ります。この違いはとても重要なポイントです。(203頁)


 現実の市場の価格変動が正規分布よりもべき分布に近いとすると、これまでほぼ起こらないとされてきた現象が想定以上の確率で起きることになるし、現に起きている。
 説得的なストーリーを持ったプライシングの理論として金融工学の果たすべき役割はまだあるだろうが、これからは経済物理学の知見を全く無視することはできなくなるのではないかと、私も素人ながら考えている。

はじめての金融工学 (講談社現代新書)

はじめての金融工学 (講談社現代新書)