本の覚書

本と語学のはなし

『自由はどこまで可能か』 〔5〕


森村進『自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門』(講談社現代新書,2001年)
 個人的な傾向としてリバタリアンの気質は十分にあると思う。何よりも組織を憎むし、公務員たることにも我慢がならなかった。しかし、経済の領域にまで全面的に自由を押し広げ、無政府かもしくは限りなく小さな政府を目指すのは行き過ぎではないかとの疑念は拭えない。すべてが民間で行われる世界というのは、決して自由の世界ではないような気もする。むしろリバタリアニズムの理念に反する世界になりそうではないか。まったき平等が不可能なら、まったき自由もまた不可能なのではないか。
 経済危機以来ますます肩身の狭いリバタリアニズムではあるが、こういう人たちにはコミュニスト同様、あくまで理念を貫き通してもらいたい。