本の覚書

本と語学のはなし

『経済倫理=あなたは、なに主義?』 〔3〕


●橋本務『経済倫理=あたなは、なに主義?』(講談社選書メチエ,2008年)
 アンケートに答えながら、自分の主義や価値の傾向を知ることができる本。
 私は共産主義者とかリベラルってことになるのかな。原理を強く押し通せば前者だし、現実的な路線をとれば後者になる。
 ところが、政治経済の羅針盤マップで自分の立ち位置を調べると、実はリバタリアンのようでもある。基本は自由なのだ。
 価値観を見ると、個人の主観レベルでは普遍主義と自己統御が抜きんでていて、まあこれは驚かない。普通は慈愛心がトップに来るらしいけど、私はあまり人間らしい資質を備えていないので仕方ない。文化レベルでは平等主義、調和、知的自律の値が高いのは、そんなもんだろうと思うが、意外にもそれらを押さえて断トツトップに立ったのは社会に埋め込まれた生活。これは地域コミュニタリアリズムの価値観と重なるらしい。地方公務員をやっていた人間がこんなことを言うのをご容赦願いたいが、私は地域社会を尊重しているつもりは全くない。おそらく、世に出て活躍したいというような野望をことごとく否定した結果、あんたは地域の人だねと言い渡されてしまったものらしい。
 個々のイデオロギーを深く掘り下げるのはこの本の目指すところではないので少々物足りないが、代表的な主義主張の相関関係が見えてきてなかなか面白い。