本の覚書

本と語学のはなし

A Christmas Carol


 昨日、池訳の「まった毀損の意図により」は「まったきその意図により」を誤入力、誤変換したものだろうかと書いた。これは取り消したい。池訳を見ていると、「さりながら、ものを脅さんそのために、まった毀損の意図により」の部分は五七五七五で調子を取っているようである。そのために、敢えて「また」を「まった」にしたのだろうと思うようになったのだ。
 「まった毀損の意図により」に対応する原文は「or make one feature odious」で間違いないだろう。おそらく「make」の前に「to」を補って考えるのだろう。「to thy dread purposes」と前にあるから省略できるのか、原形不定詞でもto不定詞と同じ役割を果たせるのか、その辺の文法上の根拠は私にはよく分からない。
 村岡訳の解釈を否定する根拠もよく分からない。「否定詞+A or B」というのは普通に使われる形で、常に「neither A nor B」でなくてはいけないなどということはない。「head」は首より上のことだから、顔の造作に話が及んでも不思議ではない。「one hair」という極端な例の後に「one feature」を持ち出し、細から粗へと逆行するのは、順番として不自然ではないかということなのだろうか。しかし、言いたいことは「髪の毛一筋たりとも動かすな、愛された者は安らかに死なせよ」というくらいのことだと思うのだが、どうだろう?