本の覚書

本と語学のはなし

『いまこそ『資本論』』


●嶋崇『いまこそ『資本論』』(朝日新書,2008年)
 岩波文庫の『資本論』全九冊を持っているが、読み通すことはないだろう。筑摩書房の「マルクス・コレクション」にはマルクスの生前に刊行された第一巻が収められている。有名な剰余価値が論じられている部分だからこれだけでも読みたいとは思うが、思うだけで終わりそうな気もする。だから、こういう本があると便利である。小さい本なのに三巻まで全部扱っている。
 革命のすすめではない。ひたすら資本主義の分析である。その上で、「資本主義は「蓄積欲」という欲望を利用して経済発展を遂げるというシステム」(204頁)であり、マルクスが生涯をかけて『資本論』で解明したのは、「資本主義がどれだけ優れたシステムであっても、交換価値を貯め込む欲望にとらわれているかぎり、物質的にどんなに豊かになっても、人間は決して自由になれない」(205頁)ということだったと言う。

 ではどうするか。それを考えるのは、あとを任されたわれわれの仕事なんじゃないかな。(205頁)


 というわけで、特に何かのビジョンを示して終わる本ではない。しかし、この問いかけを受けて、資本主義はどこまで必要なのかと考え続ける感性は持っていた方がよい。


いまこそ『資本論』 (朝日新書)

いまこそ『資本論』 (朝日新書)

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