本の覚書

本と語学のはなし

『マネーはこう動く』


藤巻健史『マネーはこう動く 知識ゼロでわかる実践・経済学』(光文社,2007年)
 光文社の新人研修として行った経済講座をもとに書籍化したものなので、『実践・金融マーケット集中講義』(光文社新書)に比べるとはるかに初歩レベル。やはり『集中講義』を読み直すべきなのだと思うが、その前に姉妹編らしき『マネーはこう掴む』(光文社)がある。こちらはデリバティブの使い方にまで踏み込んでいるので、少しレベルアップしているようだ。
 興味深いのは、『こう動く』と『こう掴む』の間にサブプライム問題が深刻化したこと。*1後者のまえがきで、藤巻は言う。

 残念なことに、前作『マネーはこう動く』を上梓後、サブプライムローン問題が深刻化し、今日(2008年1月)現在、前作で書いたことのすべてが反対方向に動いています。しかし、私自身は自分の信念、予想は全く変えていませんし、自分の資産運用法も変えていません。(2-3頁)


 『こう動く』で主張したことというのは、日本は今後インフレに向かい、長期金利は上昇し、為替は円安に向かう。長期固定金利でお金を借りられるだけ借り、日本の不動産、日米の株、外貨建て商品を購入して、インフレヘッジのポートフォリオを組むべきだ(自分でもそのように投資している)、というもの。
 サブプライム問題が深刻化した後でも信念を変えないのは、藤巻の考えるシナリオ通りに行かなければ、恐らく日本そのものが沈没するだろうから。
 読むなら今の内に。


 光文社の研修には、経済学部4年生で銀行の内々定をもらっている藤巻ジュニアも出席した。その息子から受けた質問に回答するという形の付録が付いている(本物か架空かは分からないが、本物だとしたら本人の名誉のためにはならないような内容)。
 表紙にうつるイトーヨーカ堂のワイシャツとネクタイは、藤巻弟(セブン&アイ生活デザイン研究所社長)のプロデュース商品だという。
 とても身内に甘い人のようだ。


*1:『こう動く』でもサブプライムに言及はしているが、当時は「そんなにアメリカ経済に悲観的ならアメリカ株を売ってみろよ」と吠えている。(195頁)