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『お金に「正しさ」はあるのか』


仲正昌樹『お金に「正しさ」はあるのか』(ちくま新書)
 久し振りの仲正昌樹貨幣論というより、貨幣から読み解く文芸批評のようだと思っていたら、仲正の出発点は文学研究だったのだそうだ。『ヴェニスの商人』とか『ファウスト』を扱っている間はまだよかったのだが、『アッシュベイビー』や『海辺のカフカ』辺りに至ってはどうでもよくなって来た。
 タイトルだけ見ると、マルクス主義的な主張が展開されるような気がする。


 マルクス主義的な視点に立てば、「貨幣」の自己増殖運動としての「資本」を廃棄し、ファンタスマゴリーによって“不自然に”膨れ上がっている「欲望」を正常化しない限り、人類全体にとてっての真の“正義”は実現しない。そのためには、「欲望」と「資本」との間の循環構造を媒介している、利殖的性質を持つ現在の「貨幣」をどうにかするしかない。(201頁)


 しかし、仲正はそうは考えない。そして、例えば廣松渉などからはアリストテレスを焼き直しただけの時代遅れの正義論と切り捨てられた、ロールズの正義論を最後に持ち出してくる。
 私としては、文芸批評はほどほどにして、そういう議論をもっと詳しく展開してもらいたかった。


お金に「正しさ」はあるのか (ちくま新書)

お金に「正しさ」はあるのか (ちくま新書)

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