本の覚書

本と語学のはなし

L’étranger


 『異邦人』の中で、よく分からない文章を書き抜いておく。
 ムルソーの隣人が、騙した女を懲らしめたくて、こんなことを口走ったのだという。


 Il avais d’abord pensé à l’emmener dans un hôtel et à appeler les « moeurs » pour causer un scandale et la faire mettre en carte.


 新潮文庫の訳では、「彼がまず考えついたのは、女をホテルに連れ込み《風紀係》を呼び込んでスキャンダルを起こし、女をカードへ載せてしまうことだった」となっている。本当に内容を理解して訳したのだろうか。
 「ホテル」というのは初め市庁舎のことかと思ったが、不定冠詞が付いているので、訳のとおりなのだろう。
 « moeurs »は隠語っぽいのでよく分からないが、ふつうは人間を指す言葉ではないので、訳が正しいのかどうかもよく分からない。
 一番不審なのが、「女をカードに載せてしまう」という訳である。ホテルのブラック・リストに載せるということなのか。それで女を懲らしめたことになるのだろうか。辞書を引くと、「femme (fille) en carte」で「登録された売春婦」という意味があるというけれど(昔は公娼制度があったのだ)、この場合の「カード」もそれと関係があるのだろうか。
 どうもモヤモヤは晴れない。

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