本の覚書

本と語学のはなし

『応用倫理学のすすめ』


加藤尚武『応用倫理学のすすめ』(丸善ライブラリー)
 善とは何か、悪とは何か、というレベルの話ではなくて、代理母は許されるか(6章)とか鯨は食べてよいか(12章)といった、新聞なんかでもよく見るような具体的な事例に即して判断の基準を設計してみるための倫理学
 「あとがき」ではこんなふうに書いている。


 「応用倫理学」と言うと、「もう原理ができあがっているので、今度は応用する時が来た」と思いこむ人がいるけれど、それは誤解である。正確に言うと「応用倫理学」は、「どのような原理の応用だと見なせばいいのか」を研究する領域であって、あらかじめ分かっている原理を適用するのではない。(182頁)


 カントを学べば全ての行動原理が確定するということではないのだ。倫理学は生ものである。そのつど我々が自分で判断し、合意形成をし、チェックし、蓄積しながら、進むより他ない。
 加藤の言うことを受け売りするためではなく、論点を整理し自分なりの判断をするために、新書の応用倫理学シリーズはしっかり読んでおきたい。特に環境倫理学は楽しみだ。

応用倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)

応用倫理学のすすめ (丸善ライブラリー)