本の覚書

本と語学のはなし

「酒虫」

 酒虫と云う物が、どんな物だか、それが腹の中にいなくなると、どうなるのだか、枕もとにある酒の瓶は、何にするつもりなのだか、それを知っているのは、蛮僧のほかに一人もない。こう云うと、何も知らずに、炎天へ裸で出ている劉は、はなはだ、迂闊なように思われるが、普通の人間が、学校の教育などを受けるのも、実は大抵、これと同じような事をしているのである。(芥川龍之介「酒虫」)