本の覚書

本と語学のはなし

『雲の名前の手帖 改訂版』

◎高橋健司『雲の名前の手帖 改訂版』(シンク)


 不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心(石川啄木


 十五の頃、たとえ不如意の人生を送ろうとも、空の雲を見ていられるなら、これを不幸と呼ぶことなど思いもよらなかった。
 一度それをある同級生に言ってみた。予想に反して共感してもらうことができた。それだけの記憶しかない奴だけど、それだけで今も友人の一人に数えている。
 海も緑も花も雪も、写真で見る限りはどれも好きなのだけど、嫌いだと嘘をついてみたところでちっとも心は痛まない。本当に眺めていたいのは雲のある空ばかりだ。


 昔、雲の名前の本を持っていたのだが、いくら探しても見当たらない。仕方がないので、図書館で類書を借りてみる。いい本があったら自分で買いたいのだ。
 吸い込まれそう。もう少し気象のことが書いてあるとなおよい。