本の覚書

本と語学のはなし

『蛇を踏む』

川上弘美『蛇を踏む』(文春文庫)
 芥川賞受賞の表題作のほか、「消える」「惜夜記(あたらよき)」を収録する。
 川上自身のあとがきによれば、「自分の書く小説を、わたしはひそかに「うそばなし」と呼んでいます」とのことだ。「うそばなし」なんて文学の中ではありふれていて、オウィディウスやらカフカやら安部公房やらを持ち出すまでもないのだが、そしてそれらの作家には夢中になった覚えが確かにあるのだが、今、川上の小説を読むのが苦痛でしかないのは不思議なことだ。「蛇を踏む」と「消える」までは踏ん張ったけど、「惜夜記」の残り50ページがどうしても耐えられそうにない。保坂和志流に、潔く投げ出すことにした。
 「蛇を踏む」は蛇を踏んだら人間になって、蛇の世界に誘われるという話。私の卒業論文は、ホフマンの「黄金の壺」を卒業せねばならぬことを扱ったのだった!


蛇を踏む (文春文庫)

蛇を踏む (文春文庫)