本の覚書

本と語学のはなし

旧版ボキャビル【購入】

 新版と比較すると、旧版は理系分野語彙が少ない。医学と環境以外は全部ひとまとめでサイエンス・テクノロジーとして扱われている。ただし、工業英検を受けるつもりのない私にとっては、新版には不要の単語も多いわけだが(日本語訳を見ても何のことか分からないものもある)。
 文系分野語彙はおそらく旧版の方が充実しているが、新版にしか出てこない単語もけっこうあるようだ。どちらがよいとも言い切れない。
 日本事象語彙は新版にしか存在しない。通訳ガイドを目指す人のために加えられたのだろう。
 一般語彙は、新版がコロケーションで覚えることを重視しているのに対して、旧版は同義語をまとめることの方に力を入れている。例えば、新版では feasible という形容詞を扱うのに〈feasible (plan, project, approach, excuse)(実行可能な)――「計画・手法」と主に結びつく〉と記述しているのに対して、旧版の方は〈(feasible, viable, practicable) plan――実行可能な計画 (= workable)〉となっている。なお新版では、viable も practicable も workable も扱われていない。それぞれに長所はあるだろうが、おそらく語彙数から言えば旧版の方に軍配が上がる。


 タイムを読むことだけが目的なら、旧版の方がいいんじゃないかという気がする。とは言え、新版も捨てがたいので、しばらくは交互に見ていくことにしよう。

関連記事

ユダヤ戦記3/フラウィウス・ヨセフス

 『ユダヤ戦記』全巻読了。
 エルサレム陥落の後、最後はマサダの要塞も攻略される。ここに立てこもったユダヤ人たちは、ヨセフスの伝えるところによると、先ず妻子を殺し、残った男たちはくじを引いて処刑者を決め集団自決した。宮殿は焼き払われたが、しかし、飢えのために自暴自棄になったのだと思われぬために、あり余る食料はそのまま残しておいたという。


 訳者の秦剛平の信条のことはよく知らないけど、基本的にキリスト教は嫌いらしい。少なくとも、反ユダヤ主義と結びついたキリスト教が大嫌いである。エウセビオスの『教会史』も訳してるけど、そのヨセフス受容のゆえにこれを屑の書と呼んでいる。
 一方で、イスラエルナショナリズムも嫌いであるらしい。
 今後この人の著作とどう付き合っていくべきか、今のところよく分からない。

関連記事